投稿日:2019.06.05/更新日:2020.03.06

夏に心配な「心」「肺」をサポートする生薬

昨年の夏は「災害」とも言われた猛暑でした。体温調節が鈍くなり、体力も低下した高齢の方はもちろん細心の注意が必要ですが、若い方でもしっかりと養生を心がける必要があります。夏に体調管理を怠ると、そのダメージは残暑の秋まで引きずることになります。ここでは夏に心配となる五臓の「心(しん)」と「肺(はい)」をサポートする処方をご紹介します。

<高温多湿が身体に及ぼす影響>
蒸し暑い戸外から涼しい部屋に戻ると呼吸もスムーズになり、身体にまとわりついていた不快感がなくなると思います。これは五臓の「心」と「肺」の働きから理由を探ることができます。漢方では夏は「心」に負担のかかる季節であるととらえています。「心」は心臓の働きである血液を巡らせるポンプ機能のほか、精神活動や常に拍動して熱を生み出す熱源としての働きもあります。しかし、絶えず働く「心」は熱がこもりやすい特徴があるため、気温の高い夏場は特に注意が必要になります。身体の中で常に生み出されている代謝熱を効率よく排熱するために私たちの身体は体表からの気化熱を利用しています。高温多湿になるとこの排熱が妨げられやすくなり、身体に熱がこもりやすくなります。ひどく熱がこもると熱中症を引き起こしますし、それでなくても血液の熱が過剰になり流れが悪くなったり「心」の負担も増え、十分な血液を全身に送れなくなります。こうなると「心」は拍動数を増やして血液循環の不足を補おうとするため動悸(どうき)が起こる場合があります。血液循環が悪くなれば酸素の運搬も困難になるため「肺」働きが悪くなり呼吸が激しくなり、息切れなどが現れる場合があります。

<加齢とともに心臓の働きが低下する>
年齢とともに筋力の低下は避けられません。若いころには平気だった活動量でもすぐに疲れてしまったり、息があがってしまいます。「筋力」と聞くと、足腰の筋力をイメージする方も多いかもしれませんが、実は筋肉の塊である心臓も加齢の影響を大きく受けています。高齢の方が熱中症で倒れやすくなるのは全身機能の低下に加えて、心臓機能の低下も大きな原因になります。

<心肺機能をサポートする蟾酥(センソ)>
心臓のポンプ機能を高めることで有名なのが蟾酥(センソ)という生薬です。ポイントになるのが、心拍数を増やすことなく、収縮力を高めるという点です。これは心臓に負担をかけずに心臓の働きを助けてくれることを意味します。センソの注目すべき点は効能の高さに加えて、安全性です。医療用の強心薬であるジギタリスと同様のメカニズムで強心作用を示すのですが、排泄が速く身体に蓄積しないという特徴があります。動物性生薬の特徴でもある即効性もピカイチです。また、肺の働きを助けるため喘息などの呼吸器疾患を持つ方にも優れた効果を発揮します。

<センソ製剤の使い方>
「心」「肺」の働きをサポートするセンソ製剤は幅広い使い方がありますが、特にこれからの季節で使える場面が「高温多湿による身体の重だるさやむくみ、息苦しさ」、「登山や炎天下でのゴルフなどの野外活動時の負担軽減」、「屋内と屋外の温度差によるふらつき」などで特にお勧めです。

    この記事の監修薬剤師

    運龍堂 佐藤貴繁

    略歴

    1977年 北海道生まれ。北海道立札幌南高等学校
         北海道大学薬学部を卒業
    2003年 薬剤師免許を取得
    2006年 北海道大学大学院薬学研究科生体分子薬学
         専攻博士後期課程を終了後、博士(薬学)取得
    2011年 福祉社会法人 緑仙会理事 就任
    2012年 杜の都の漢方薬局 運龍堂 開局
    2013年 宮城県自然薬研究会会長 就任
    2017年 宮城県伝統生薬研究会会長 就任

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    2019/06/05

    夏に心配な「心」「肺」をサポートする生薬

    昨年の夏は「災害」とも言われた猛暑でした。体温調節が鈍くなり、体力も低下した高齢の方はもちろん細心の注意が必要ですが、若い方でもしっかりと養生を心がける必要があります。夏に体調管理を怠ると、そのダメージは残暑の秋まで引きずることになります。ここでは夏に心配となる五臓の「心(しん)」と「肺(はい)」をサポートする処方をご紹介します。

    <高温多湿が身体に及ぼす影響>
    蒸し暑い戸外から涼しい部屋に戻ると呼吸もスムーズになり、身体にまとわりついていた不快感がなくなると思います。これは五臓の「心」と「肺」の働きから理由を探ることができます。漢方では夏は「心」に負担のかかる季節であるととらえています。「心」は心臓の働きである血液を巡らせるポンプ機能のほか、精神活動や常に拍動して熱を生み出す熱源としての働きもあります。しかし、絶えず働く「心」は熱がこもりやすい特徴があるため、気温の高い夏場は特に注意が必要になります。身体の中で常に生み出されている代謝熱を効率よく排熱するために私たちの身体は体表からの気化熱を利用しています。高温多湿になるとこの排熱が妨げられやすくなり、身体に熱がこもりやすくなります。ひどく熱がこもると熱中症を引き起こしますし、それでなくても血液の熱が過剰になり流れが悪くなったり「心」の負担も増え、十分な血液を全身に送れなくなります。こうなると「心」は拍動数を増やして血液循環の不足を補おうとするため動悸(どうき)が起こる場合があります。血液循環が悪くなれば酸素の運搬も困難になるため「肺」働きが悪くなり呼吸が激しくなり、息切れなどが現れる場合があります。

    <加齢とともに心臓の働きが低下する>
    年齢とともに筋力の低下は避けられません。若いころには平気だった活動量でもすぐに疲れてしまったり、息があがってしまいます。「筋力」と聞くと、足腰の筋力をイメージする方も多いかもしれませんが、実は筋肉の塊である心臓も加齢の影響を大きく受けています。高齢の方が熱中症で倒れやすくなるのは全身機能の低下に加えて、心臓機能の低下も大きな原因になります。

    <心肺機能をサポートする蟾酥(センソ)>
    心臓のポンプ機能を高めることで有名なのが蟾酥(センソ)という生薬です。ポイントになるのが、心拍数を増やすことなく、収縮力を高めるという点です。これは心臓に負担をかけずに心臓の働きを助けてくれることを意味します。センソの注目すべき点は効能の高さに加えて、安全性です。医療用の強心薬であるジギタリスと同様のメカニズムで強心作用を示すのですが、排泄が速く身体に蓄積しないという特徴があります。動物性生薬の特徴でもある即効性もピカイチです。また、肺の働きを助けるため喘息などの呼吸器疾患を持つ方にも優れた効果を発揮します。

    <センソ製剤の使い方>
    「心」「肺」の働きをサポートするセンソ製剤は幅広い使い方がありますが、特にこれからの季節で使える場面が「高温多湿による身体の重だるさやむくみ、息苦しさ」、「登山や炎天下でのゴルフなどの野外活動時の負担軽減」、「屋内と屋外の温度差によるふらつき」などで特にお勧めです。

      この記事の監修薬剤師

      運龍堂 佐藤貴繁

      略歴

      1977年 北海道生まれ。北海道立札幌南高等学校
           北海道大学薬学部を卒業
      2003年 薬剤師免許を取得
      2006年 北海道大学大学院薬学研究科生体分子薬学
           専攻博士後期課程を終了後、博士(薬学)取得
      2011年 福祉社会法人 緑仙会理事 就任
      2012年 杜の都の漢方薬局 運龍堂 開局
      2013年 宮城県自然薬研究会会長 就任
      2017年 宮城県伝統生薬研究会会長 就任

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